【ニッチ金融解説】中古債券市場の裏側──個人投資家が知らないもう一つの投資フィールド

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はじめに

株式や投資信託は多くの個人投資家にとって馴染みがありますが、「中古債券市場」という言葉を耳にしたことがある人は少ないかもしれません。

実は、債券は発行時に買うだけでなく、途中で売買される「セカンダリーマーケット(流通市場)」が存在します。この市場では、すでに発行済みの国債や社債が取引され、金利や景気動向によって価格が上下しています。

1. 中古債券市場とは?

中古債券市場は、すでに発行された債券が投資家同士で売買される場です。新発債券(発行時に購入できる債券)とは違い、中古債券は残存期間や利率がバラバラです。

主な特徴

売り手:満期前に現金化したい投資家や金融機関 買い手:市場金利や利回りを見て割安な債券を探す投資家 取引場所:証券会社経由(場外取引が主流)

2. 中古債券価格が変動する理由

債券価格は以下の要因で日々変動します。

市場金利の変化 市場金利が上昇すると、既存の低利率債券は魅力が下がり価格が下落。逆に金利が下がると価格は上昇します。 発行体の信用力の変化 企業の業績悪化や格付けの引き下げがあると、社債価格は下落します。 残存期間の短縮 満期が近づくほど価格変動は小さくなりますが、その分利回りも低下します。

3. 中古債券を買うメリット

高利回り債を入手できる可能性 過去の高金利時代に発行された債券は、現行の新発債より高い利率で受け取れることがあります。 短期投資も可能 残存期間が1年未満の債券を選べば、比較的短期で償還されます。 分散投資の一環 株式とは異なる値動きをするため、ポートフォリオ全体のリスクを抑えられます。

4. 中古債券のリスクと注意点

価格変動リスク 金利上昇局面では価格が下落し、途中売却で損失が出る可能性があります。 信用リスク 特に社債では、発行体の経営悪化で元本が戻らない可能性も。 流動性リスク 中古債券は買い手が少なく、希望価格で売れないこともあります。 手数料の不透明さ 株式と異なり、債券の売買は店頭取引が多く、スプレッド(買値と売値の差)が広めです。

5. 個人投資家が中古債券市場に参加する方法

証券会社で取り扱い状況を確認 野村証券、大和証券、SBI証券など一部証券会社では、中古債券をネットまたは窓口で購入可能。 取引の流れ 銘柄リストから条件に合う債券を選択 最低購入額(額面100万円単位が多い)を確認 約定後、利金受取や償還まで保有 選び方のポイント 利回りだけでなく信用格付けを確認 残存期間と再投資リスクを考慮 同じ発行体でも発行時期による条件差を比較

6. 事例:中古債券で高利回りを得たケース

例えば、過去に年3%の利率で発行された10年社債が、残存5年で中古市場に出回ったとします。

もし現行の新発債が年1%だった場合、同じ発行体の債券でも中古債は割高に取引されますが、購入者は満期まで高いクーポン利回りを受け取れます。

まとめ

中古債券市場は、個人投資家にとってまだまだ未知の領域ですが、

高利回り債を探す 短期満期債で運用する ポートフォリオの分散に使う といった活用法があります。

一方で、価格変動・信用・流動性・手数料といったリスクは無視できません。

「利回りの高さだけに惹かれず、発行体の信用や市場金利の動きを見極める」ことが成功のカギです。

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